『バランス感覚…衰えていませんか?』
【カイロこまば通信】

今回は小脳の働きを紹介しながら、バランス感覚を保つことの重要性についてお話します。

小脳は大脳の後下方、脳幹部の背側にあって、それらや脊髄と緊密に連絡を取っています。容量は脳全体の10%ほどしかありませんが、神経細胞数は1000億個（大脳は140億個…）もあります。小脳の主な役割は運動の調節ですが、大脳で「このような動きをしなさい！」と指令をだしても大まかな命令でしかなく、末梢からのフィードバックを受けながら滑らかな動きを可能とするのが小脳です。最近の研究から、無意識な動作を可能にするよう行動パターンを小脳自体で記憶したり、認知や感情などの高次脳機能にも重要な役割を果たしていると考えられています。

また、小脳は前庭器官（内耳にある平衡感覚器…）からの情報も受け取っており、反射を介して眼球運動にも関わっています。小脳を機能から３つに分類すると、前庭小脳、脊髄小脳、大脳小脳に分かれ、前庭小脳は身体平衡と眼球運動の調節を、脊髄小脳は手足や身体の運動の制御を、大脳小脳は運動の計画を行っています。

バランス感覚に話を戻します。バランス感覚は反射で成り立っている（小脳だけでなく中脳や脊髄も関わっています…）のですが、眼からの情報、前庭器官からの情報、筋肉や皮膚からの情報を受け取って、小脳が全体としてバランスを保つよう調整しています（姿勢が崩れた時にどのように、どの程度戻すか…）。このバランス感覚は年齢に伴って落ちてきますが、神経細胞による働きですから、使わないとより衰えます。なので、意識して使うことがバランス感覚、更には小脳の機能をキープする秘訣なのです。

ではバランス感覚をチェックしてみましょう。当院ではバランスパッドといった不安定なところに立って目を瞑ってもらうのですが、ご自宅で行うのであれば片脚立ちはいかがでしょうか（筋肉の働きも大きく関わり、小脳というよりは身体全体のバランスチェックという要素が強くなりますが…）。大丈夫であれば、そこから目を瞑ってもらうとバランスをとることの難しさを実感してもらえると思います。注意点ですが、バランスを崩して転倒することがないよう、すぐに手を伸ばせる位置に壁や支えがある場所で行ってください。軸足がずれたり足がつくまで何秒程度できれば平均なのかといったデータは年齢・性別にあるのですが、目を瞑ってから最低でも10秒はキープできて欲しいところです（60代以上であれば最低でも5秒。2回行って良い方で判断）。

ではバランス感覚が悪い方は、どうすれば良いのでしょうか。もちろん片脚立ちを毎日のトレーニングにする方法もありますが、転倒して怪我をする危険もあるので注意が必要です。まずは全身の筋骨格のバランスを整えておくことをお勧めします（筋肉や関節からの情報は常に小脳に伝えられるので、カイロによる施術もまた小脳の活性化につながります…）。

他の方法としては、先ほど説明した小脳の別の機能を使う手もあります。バランス感覚は前庭小脳の働きなので眼球運動をトレーニングするのも一つの方法ですが、脊髄小脳、大脳小脳を使うことで小脳全体を活性化させ、結果バランス感覚を鍛えるというのもおすすめです。具体的には、お手玉やけん玉をしてみるのはいかがでしょうか。これらは、運動のプランニングを行いながら、予定外の動きに対して修正を加える、スムースにできるようになるため行動パターンを小脳に記憶させるといったことも鍛えることが出来ます。私も最近、反射神経が衰えたかな…と思うこともあって（例えば、物が落ちた時に咄嗟に掴めなかったり…）、ボールジャグリングを試しています。はじめは思うように手を動かせないもどかしさがあったのですが、徐々に意識せずできるようになり、「これぞまさに小脳の機能!!」と感じることも…。まだまだ上手く出来ないのですが、これは効きそうです。ちなみに、これを書くにあたって私も閉眼片脚立ちを試してみたのですが、103秒キープでき、年齢からしてもかなり優秀な結果でした（実際はこの1回だけで、やり直すと40秒程度なのですが…）。もちろんジャグリングの効果かどうかは分かりませんが、「バランス感覚…自信ないな～」と思われている方はそのままにせず、アンチエイジングの一環として、今日から小脳を鍛えることをお勧めします。