産後歩行時の臀部痛…寝返りもできない
【症例報告23】

歩行・寝返りといった動作や痛みの部位から、骨盤部の機能障害が疑われました。

背面から姿勢を見ると傾きは見られないものの、腰椎前弯が強い方で、下部腰椎・骨盤部にトラブルが出やすい姿勢をされていました。可動域検査を行ったところ、左への側屈や後ろに倒す伸展で右臀部に痛みが誘発されています。筋力検査では、腸腰筋や梨状筋は左に、ハムストリングスや股関節内転筋群は両側に弱化があり、股関節外側にあって歩行に大きな関わりを持つ中殿筋や大腿筋膜張筋では右で"筋力は正常も痛みが出る"といった状態でした。

また、どう運動して良いかわからないとのことで、まずは下部腹筋と骨盤底筋群が使えているかを確認したところ、やはりといっては何ですが上手く使えていませんでした。ここから始めることが大切というお話をして、エクササイズをお願いしています。

施術は骨盤のバランスを整えながらAKを用いて弱化筋を改善させるといった通常のアプローチに、下部腹筋や骨盤底筋群への反復運動（促通のため…）を加えています。2回目来院時に伺ったところ、「歩行時の痛みはだいぶ楽になっているものの、寝返りでの痛みが変わらずある」とのことでした。筋力を再検査したところ、初回に弱かった筋肉は改善していたのですが、筋力は正常も痛みが出ていた中殿筋や大腿筋膜張筋が同様の状態に戻っていました。骨盤にアジャストメントを行ったり、筋自体にアプローチしたり、腸腰筋の左右のバランスを整えたりといったことを行ったところ、3回目来院時には痛みは出ないようになっていました。寝返り時の痛みも長く同じ姿勢をした後は少し痛むもほぼ大丈夫な状態に改善しています。なお、エクササイズを頑張って頂いていたこともあってだと思いますが、「内臓が下がっている感覚がしなくなって、便秘もよくなっている」とのことでした。

経過から見ると、骨盤の外側にある中殿筋や大腿筋膜張筋に痛みが出ることで寝返り時の痛みが抜けなかったと捉えられるのですが、骨盤の安定性がなかなか改善してこなかったことが背景にあったと考えられます。2回目に骨盤へのアジャストメントを行ったことも改善に向かうアプローチだったとは思います。ただ、下肢の多くの筋肉の付着部であって土台となる骨盤が安定しないことには十分な力を発揮できませんので、症状の回復も遅れてしまうのです。下部腹筋や骨盤底筋群の促通や日常でのエクササイズを頑張って頂いたこともあっての改善なのです。

産後の骨盤矯正のポイントは、このようなところにあると思います。ただ骨盤を矯正する…、ただ筋肉をトレーニングする…といった単発のアプローチではなく、関節や筋肉をトータルに、それも多角的にチェックできることが望ましいのです。AKもその手段の一つですので、このようなアプローチをぜひ体験して頂きたいのです。ご出産後で痛みがある方、他の治療を受けているもののどうも症状が残る方、ぜひ一度ご来院ください。